赤鯱随想~2017OfficialYearBookインプレッション
日曜日についにベールを脱いだ2017グランパス。
風間監督の意向によりチームの仕上がりはかなりの部分隠されていたが、
リーグ初戦を見たことによりようやく語れるものとなったように思う。
そして、それを語るうえで重要な副読本になりそうなのが、先週土曜に発売となった、
『GRAMPUS Official YearBook 2017』である。
選手紹介の楽しさやビジュアルと共に、インタビューの部分でも大変興味深かった。
個人的な覚書替わりに、この項でまとめておくことにする。
【選手に求めたこと】
イヤーブックのインタビューで触れられているところでいくと、
まず選手には
「すべての試合に5-0で勝つ」
「人のせいにするな、モノのせいにするな」
「ボールを大事にしよう」
ということを求めました。
(GRAMPUS Official YearBook p9 監督インタビューより引用)
とある。
この3つは「どんなサッカーをするか」を表しているわけでは全くないが、
全て風間監督が最終的にやらせたいことに端的に繋がってくる、
ということが開幕戦ではっきりしたように思う。
監督自身はこの一番最初の「5-0」ばかりがクローズアップされていて苦笑することも多いようだけど、
おそらくこの3つはワンセットで風間監督のサッカー哲学であり、人生哲学なのだろう。
【目の速さ】
また、インタビューでは風間監督のよく使うフレーズ「目の速さ」についても、
インタビュアーがかなり突っ込んで聞きに回っている。
(今井ちゃん有能!)
詳しいところはそれぞれで読んでいただくとして、僕が読んで想像する限りだと
「目から入った情報を次の判断&プレーを、速く&正確に行うことつなげる」
ことを求めているんだと思う。
1つだけ引用をさせてもらうと、
(略)~本当に目が速くなる。見えているものが静止画になってくるんです。
プレーが「速い」と感じているのは自分の認識だけで、
速くないのに「速い」と錯覚してしまったら成長に繋がらない。
(GRAMPUS Official YearBook p9 監督インタビューより引用)
という部分があって、これが前にあるバスケのメンタルトレーニング本で読んだ
「集中力」の説明と定義の内容にほぼ合致する。
そちらの本では集中力のことを、
「1秒10コマの紙芝居に置き換えると、全部が読み取れてるのが高い状態、
不安とか怒りで乱されることで読み取れるコマがどんどん減っていく」
「結果として、高い集中力の時はたくさんの情報が読み取れるので時間がゆっくりに感じる、
乱されている時は情報が読み取れずにあっという間に時間が流れる」
という風に論じている。
おそらく風間監督の言っている目の速さもこれと似たようなことなのではないだろうか。
怒り、不安、迷い、それからボールを扱う技術的なことにリソースを割くことで、目は「遅く」なる。
だからこそまずは足元の、「止める、蹴る」を追究するのだろう。
【ではどこを見るのか?】
監督インタビューの中ではインタビュアーにより「どこを見るのか」についても言及されているのだが、
この部分については監督よりも選手の側から実に興味深い発言が出ていた。
田口
今まで聞かなかった言い方でも言うよね。
「攻撃の時は敵を見ろ。守備の時は味方を見ろ」とか。
(GRAMPUS Official YearBook p55 田口・磯村インタビューより引用)
赤鯱新報を読んだり、他の媒体からも
「風間監督は曖昧な言い方をせず、誤解のない言葉で伝えてくれる」
と選手からも評判の風間監督の言葉である。
というか、これまでの監督はいったいどんな表現で伝えていたんだろうね。
「感じろ!」とか言っていたのかしら。
…閑話休題。
その中で田口が言う風間監督に言われた言葉が上の引用部分だったという。
この内容、特に「守備の時は味方を見る」の部分は松田浩さんが昨年上梓されていた
『サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論』における
「守備のポジションはボールの位置と、次に味方の位置で決定される」
というゾーンディフェンスの基本とされる論理と酷似している。
そういえば昨年序盤、川崎の守備にゾーンディフェンスのエッセンスが感じられる、
というような話がタイムライン上に流れていたような気がするが、
その考え方は現在の風間監督の中にもあるということなのかもしれない。
ただし、松田さんの説くゾーンや、昨年までいたボスコやら、
欧州に詳しい方々が紹介してくれるいわゆる「ポジショナル」な考え方に比べると、
風間監督の指向している守り方はよく言えばアグレッシブ、悪く言えば無謀とすら映るように思う。
和泉が右サイドまで出張って攻めに加わったり、
櫛引が前に出てボールを奪いに行ったり、というのが機能しなかった時に、
どう復元性をもたせていくのか、もたせずに別の選手に埋めさせるのか。
興味は尽きない。
【全体として】
どんどん前に寄せていくという特殊性と合わせて、ボールを奪われた時、奪った時に、
何を見て、何を判断するように求めているのかが恐らくこの監督の指導の肝なんだろうし、
それがたくさんピッチに描かれることを楽しみにしたいと思う。
ともかく、この週末が待ち遠しい。
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