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観測籠球~後付けで語るタイムアウトとタイムマネジメント

先週のFE名古屋vs信州の2戦目。
試合時間残り4分15秒、47-59の12点差をFE名古屋がひっくり返したこのゲームは、
FE名古屋ブースターにとっては忘れられない試合となったと思う

僕もこの試合はリアルタイムでTV視聴していて非常に興奮したわけだが、
後で冷静に振り返ってみると、
「バスケットボールにおけるタイムアウトとタイムマネジメント」
を学ぶのにちょうどいいテキストになると感じたので、
その内容を書き記しておくことにする。

【まずはルールのおさらい】
バスケットボール競技規則の最新版では、
第18条にてタイムアウトの定義やルールが定められている。
今回の話題に大きな関連があるのは18.2.5の項目。
平たく言うと
第3ピリオドと第4ピリオドには各チーム3回ずつのタイムアウトが与えられる
・ただし、第4ピリオドの残り2分以降に使用できるタイムアウトは2回まで
というルールになる。
また、Bリーグでは第4ピリオドの残り5分を切って
最初にボールデッドで時計が止まるか、シュートが入ったところで
オフィシャルタイムアウトが入るというルールも存在するので、
第4ピリオドは両チーム最大4回のタイムアウトの機会が存在する

また、もう一つタイムアウトにまつわる大きなルールが、
第17条のスロー・インのところに規定されている。
17.2.4の項目がそれにあたるが、要約すると、
・第4ピリオドもしくは延長戦の残り2分以降に適用
シュートを入れられるなどで自陣からのスローインになったタイミングで
 自チームがタイムアウトを取ると、相手陣内からのスローインでゲームを再開できる
というルールになる。
これを利用することで、試合終盤の1秒でも時間が惜しいタイミングで、
自陣から相手陣内へボールを運ぶ3秒くらいを省略可能となるわけだ。

そして、今回の試合ではこのルールが勝負の明暗を分かつことになる。

【実際のプレイバイプレイ】
そこで、この試合の実際の流れをプレイバイプレイから追っていく。
FE名古屋は信州の激しいディフェンスに苦しんでターンオーバーを繰り返し、
45-45から始まった4ピリ出だしの5分45秒で2-14のランを許した。
その過程で2度のタイムアウトを消費した状況で、
残り4分15秒でオフィシャルタイムアウトとなる。
スコアはFE名古屋47-59信州。

その後の経過を記すと、

3:57 ヒル 3Pプレー 50-59
3:35 信33 トラベリング 50-59
3:23 ヒル 3Pプレー 53-59
>3PプレーのFT前に信州1回目のタイムアウト
3:16 信40 FT×× 53-59
3:15 杉本 FT○× 54-49
2:51 信24 2PFG× 54-59
2:31 ヒル 2PFG○ 56-59
2:11 信5 2PFG× 56-59
1:53 兒玉 2PFG× 56-59
1:32 信33 FT○× 56-60
1:08 杉本 3PFG○ 59-60
>信州2回目のタイムアウト
0:55 信33 2PFG× 59-60
0:38 福澤 2PFG○ 61-60
>信州最後(3回目)のタイムアウト
0:19 信24 3PFG× 61-60
0:13 ヒル TO 61-60
0:04 信5 2PFG○ 61-62
>FE名古屋最後(3回目)のタイムアウト
0:03 ジョシュ FT○○ 63-62
0:00 エンドラインからスローインもシュートできずゲームエンド

という経過で、FE名古屋が最後の4分15秒を16-3のランで走り切り、
逆転勝利を収めた、という内容になる。

【タイムアウトのマネジメントについて】
ここで勝負の明暗を分けたのが最後の2つのプレーだろう。
残り4秒の時点で逆転シュートを許したFE名古屋はそこで最後のタイムアウトを使用。
再開を相手陣内からにできたことで、
杉本のロブパスを受けたジョシュがそのままシュートに行き、
相手のファウルを誘って得たフリースローを2本決めて逆転とした
一方の信州はタイムアウトを使い切っていたため、
逆転された後の再開は自陣エンドラインからとせざるを得ず、
何とか相手陣内に持ち込んだボールも時間内にシュートに行ききれずにゲームを終えている。

ここで一つ疑問に思ったのが、
信州は最後のポゼッションまでタイムアウトを残せなかったのか?
というところだ。
勝負のモメンタムとしては完全にFE名古屋に分があって、
冷静な判断が難しかったであろうという試合ではある。

それでもあえて、後付分析であるということも自覚したうえで申し上げると、

「残り1:08の杉本の3Pが入った時点でのタイムアウトが一つ余分だった

と言えるのではないかと思う。

【試合終了間際のタイムマネジメント】
その時点での状況を信州目線で並べると、

(1)シュートが入ったところでもなお1点差で勝っている
(2)残りは1分08秒=68秒
(3)攻撃権は自分たち

という状況だ。
これにそもそものバスケットボールのゲーム性を重ねてみると

(4)1回の攻撃は24秒以内で行わなければならない
(5)ほとんどの場合、1回の攻撃で入るのは3点まで

となる。ここで信州にとって最悪の事態は
「自分たちの攻撃が失敗→相手の攻撃が成功」となる。
(タイムアウト明けに実際そうなったわけだが)
ただし、その最悪の事態が起こった場合、相手にリードを許すことになるわけだが、
今回の試合の条件でいくとこの事態が起こったとしても

・相手のリードは1点か2点=攻撃1回で追いつくもしくは逆転できる点差
・こちら側の攻撃と相手の攻撃で最大限(24秒)時間を使っても攻撃の時間が最低20秒残る

という状況になるわけで、同点もしくは逆転のチャンスを十分に残して最後の攻撃が迎えられる。
こういった状況を考えると、あそこでのタイムアウトはまだ、温存という手があったのでは、
取るとしたら逆転されてからで良かったのでは、と思えるのである。
もちろん、あれだけの点差を追いつかれて冷静でいられるチームは少ないわけで、
この試合について言えば、あのタイムアウトをパニック状態で取らせたFE名古屋の勢いが、
最後の最後でひと押しとして効いた、ということにはなるだろう。

【時計が止まるスポーツの面白さ】
ここ最近Twitter上でマーク氏や青木氏がよく言及している
「2 for 1」のシチュエーションなども、
バスケットボールにおける時計の考え方の面白さにつながる部分だと思う。
この試合もFE名古屋ブースターとしては大いに熱狂したのだけど
改めて考えてみると、バスケットボールの奥深さを感じさせるゲームでもあったなあと、
熱狂の後にしみじみ感じたのであった。
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